<月刊AMI>2016年2月号 Vol.174 ■△▽●○□


1.「忍」に学ぶ


 右掲は故大鵬さんが北海道庁に「忍」という直筆の書を贈った写真です。
大鵬さんは5才の時に樺太で終戦を迎え、ソ連軍が迫る中、母子で最後の引き揚げ船で小樽へ帰る時に母が体調を崩して稚内で下船したが、その船は小樽への途中でソ連の潜水艦魚雷で沈没されたので強運にもその難を逃れたとの事です。

 母子家庭だったので貧しい生活だったが、16才の時、叔父に連れられ、巡業に来ていた二所ノ関部屋に行き入門したのです。
大鵬さんの素質を見抜いた親方は相撲界独特の「かわいがり」で鍛え上げたのです。
「かわいがり」と言っても「しごき」同様な苦痛がある訳です。
それに耐えて実力をつけて行く訳です。
「けいこ」と「ちゃんこ」で「技」と「体」をつくり、それに耐え抜く精神力で「心」を磨いたのです。
よく「心技体」と言いますが、「技」と「体」があって「心」という事が分かります。

 大鵬さんは「忍」という言葉が好んで書かれており「信条」にされていました。
「忍は心に上に刀と書く」と大鵬さんの「忍」という「信条」の厳しさを話されているのです。
しかし、大鵬部屋を娘婿の大嶽親方に譲るときに、直筆の「夢」の字を贈ったのです。
時代は「忍」を求めても、若者がついて来ない実状に合わせたのです。
しかし、真の「夢」を追い求めるには影の努力が大切という事は、どんな世界でも共通しているのです。

 スポーツの世界では「練習はウソをつかない」と言えます。
練習には「忍」が必要なのですが、超一流は飛びぬけて練習に耐えられるのです。
「千本ノック」とか言いますが、トコトン鍛え上げるノックは「しごき」とも映るくらいです。
それに耐えられる「心技体」があってスター選手への道が拓かれるのです。
私の世代では王さんや長嶋さんを例に出しますが、宿舎に帰っても素振り、長嶋さんは「ピューン」という音で松井選手を鍛え挙げたと言われるが、なかなか妥協しない感覚を追い求める「心」が「技」と「体」を磨くのです。

 我々、一般人も同じと思います。たまに幸運でうまく行くことがあるかも知れませんが、それでは真の「オーラ」が身体から出て来ないのです。
やはり、いろんな「壁」を乗り越えた自信が「折れない心」を作り上げ、その経験から導き出されるルール化で人の指導に繋がって行くのです。
よく「流儀」と言いますが、磨かれた「やり方」は一朝一夕では出来るものではなく、「守破離」という言葉があるように、最初は「先輩」に学び、それを真似て「コツ」をつかみ、その「コツ」を自分のものにして実践する中で、さらに、自分の工夫を加えて「破」となり、それを繰り返して「離」となるのです。時間がかかるのです。

 「時間がかかる」≒「忍」とも言えます。故船井先生は「コツコツ、ジワジワ、イキイキ、タンタン」という言葉を教えて下さっています。
何事もやり続けるとうまく行く時が来るのですが、それに満足して「イキイキ」ばかりしていてはダメで、また、「タンタン」としてやり続けることが大切と教えて下さっているのです。
そういう意味では「夢」って、出来たと喜ぶ「夢」は束の間であり、「夢」とは永遠に追い続けるものと言えるのです。
これを噛みしめて、毎日を「忍」で過ごして行きたいと思います。


2.最後に
2016年は年初から株価が下落するという「まさか」の展開から始まり、なかなか回復の兆しが見えない状況です。
ある評論家はアメリカがシェールガス開発に成功したので石油がダブつき原油安になったので、アラブ諸国が海外投資していたオイルマネーを引き上げていることも大きな原因と言っています。
実態の伴わない中国株は大きな混乱になっており、それに引きづられて各国の株が変動している感じです。
この構造は大きくは変わりようがないので、グローバルな金の移動による混乱は続くものと思います。
専門家ではないので、これ以上のことは書けませんが、本文にある「忍」の時が来そうと覚悟しています。


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